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佐藤 智徳; 山本 正弘; 塚田 隆; 加藤 千明
材料と環境, 64(3), p.91 - 97, 2015/03
沸騰水型軽水炉(BWR)一次冷却系の冷却水は、水質管理により高純度な水質が維持される。さらに、水の放射線分解により生成される過酸化水素が酸化剤種として存在している。そこで、このような高温水中でのステンレス鋼のさらされている腐食環境を評価するため、支持電解質を添加せず、過酸化水素のみを添加した高温純水中に浸漬させたステンレス鋼の電気化学インピーダンス測定を実施した。過酸化水素の濃度条件を変えて測定した結果、測定された電気化学インピーダンスに顕著な変化が確認された。取得した結果の等価回路解析により、溶液抵抗、分極抵抗を同定した。同定された溶液抵抗をもとに、作用極と対極間の電流線分布に関して3次元有限要素法による解析を実施し、セル定数の補正を実施した結果、導電率として4.410S/cmが取得された。過酸化水素濃度を変化させた時の分極抵抗の変化から、分極抵抗の逆数が過酸化水素濃度の一次関数となることが示された。これは、ステンレス鋼表面の腐食電流が過酸化水素の拡散限界電流により決定されていることを示している。過酸化水素の高温水中での拡散係数の同定を実施した結果、1.510cm/sが取得された。これは沸騰水型軽水炉条件における過酸化水素の拡散係数として従来用いられた酸素の高温水中での拡散係数の約2倍となった。